皆さんこんにちは!
株式会社宝企画の更新担当の中西です。
~さび・塩分・旧塗膜~
船舶塗装というと、船体へ新しい色を塗る仕事を想像する方が多いかもしれません。しかし、実際の船舶塗装では、塗料を塗る前の「下地処理」が仕上がりと耐久性を大きく左右します。
船は、海水、潮風、紫外線、雨、波、振動など、非常に厳しい環境で使用されます。鋼板でつくられた船体は、塗膜が傷んで金属面が露出すると、さびが進行しやすくなります。表面に塩分や油分、古い塗膜が残った状態で新しい塗料を塗っても、十分に密着せず、短期間で膨れや剥がれが起こる可能性があります⚠️
そのため、船舶塗装の職人には、「どの塗料を塗るか」だけではなく、「どのような状態まで表面を整えるか」を判断する技術が求められます。
今回は、船舶塗装業における下地処理の重要性と、その専門技術についてご紹介します。
目次
下地処理を始める前に、船体表面の状態を詳しく確認します🔍
さびの広がり方、旧塗膜の浮きや剥がれ、油汚れ、海洋生物の付着、溶接部の状態などを見ます。
船底と甲板では、受ける環境が異なります。
船底は海水へ長時間触れ、貝や藻などが付着しやすい場所です。甲板は日光や雨にさらされ、歩行や荷役作業による摩耗も受けます。タンク内部では、液体や湿気、閉鎖された空間特有の条件があります。
同じ船の中でも、場所によって必要な処理方法は変わります。
表面を目で見るだけでなく、ハンマーなどで軽く確認し、浮いた塗膜や腐食部分がないかを判断することもあります。
塗膜が一見きれいに残っていても、その下でさびが進んでいる場合があります。小さな膨れやひび割れを見逃さないことが重要です。
船底には、航行や停泊によって、藻、貝類、ぬめりなどが付着します🐚
これらが残ったままでは、塗料を塗ることはできません。
まず、高圧水洗浄などを行い、船底へ付着した汚れや海洋生物を除去します。
水圧が弱すぎると、汚れや弱った塗膜を十分に落とせません。反対に、必要以上に強い水圧を当てると、残すべき塗膜や設備を傷める可能性があります。
ノズルと船体の距離、角度、移動速度を調整しながら作業します💦
船体の曲面や溶接部、突起物の周囲には、汚れが残りやすいため注意が必要です。
プロペラ周辺、舵、吸入口など、構造が複雑な部分では、角度を変えながら確認します。
洗浄後は、落とした汚れや水が作業場所へ残らないように処理し、次の工程へ進める状態を整えます。
海水に触れている船体には、目に見えない塩分が付着しています。
表面が乾いてきれいに見えても、塩分が残っている場合があります🧂
塩分が残った鋼板へ塗装すると、塗膜の内部で水分を引き寄せ、膨れや腐食の原因になることがあります。
そのため、洗浄後には必要に応じて表面状態を確認し、塩分が十分に除去されているかを判断します。
特に、さびが深く入り込んだ部分や、溶接部の凹凸には塩分が残りやすくなります。
一度洗っただけで安心せず、必要に応じて再洗浄します。
船舶塗装では、目に見える汚れだけでなく、見えない塩分を管理することが重要です。
船体に残っている旧塗膜を、すべて取り除く場合もあれば、密着している部分を残す場合もあります。
どこまで除去するかは、塗膜の劣化状態や施工仕様によって決まります。
浮いている塗膜や、ひび割れた部分は確実に取り除きます。
密着しているように見えても、新しい塗料との相性が悪い場合は、塗り重ねによって膨れや剥がれが起こる可能性があります。
旧塗料の種類、施工時期、現在の状態などを確認し、新しい塗料を重ねられるかを判断します🎨
部分補修では、旧塗膜と鋼板の境目へ段差ができないように、周辺を滑らかに整えます。
段差が残ると、新しい塗膜が薄くなったり、見た目が不自然になったりします。
さびや旧塗膜を取り除く作業は、一般にケレンと呼ばれます🔨
ワイヤーブラシ、スクレーパー、ディスクサンダー、ニードルスケーラーなど、さまざまな工具を使用します。
工具は、さびの状態、施工面積、船体の形状に合わせて選びます。
広い平面では機械工具が効率的ですが、狭い隙間や複雑な溶接部では、手工具が必要です。
表面だけの軽いさびと、鋼板へ深く入り込んださびでは、必要な処理が異なります。
さびが残ったまま上から塗装すると、内部で腐食が進みます。
一方で、強く削りすぎれば、健全な鋼板まで傷める可能性があります。
必要な範囲を見極めながら、塗料が密着できる表面をつくることが職人の技術です。
大規模な船体塗装では、研掃材を吹き付けてさびや旧塗膜を除去するブラスト処理が行われることがあります。
ブラスト処理は、広い範囲を均一に処理しやすく、鋼板表面へ細かな凹凸をつくることができます。
この凹凸によって、塗料が表面へ食いつきやすくなります✨
ただし、研掃材の種類、粒の大きさ、吹付け圧力、ノズルの距離などによって仕上がりが変わります。
粗すぎる表面へ薄い塗膜しか付けなければ、凹凸の山部分で塗膜が薄くなり、早期腐食の原因になります。
逆に、表面が滑らかすぎると、十分な密着性が得られない場合があります。
仕様に合った表面状態へ整えることが重要です。
ブラスト作業では、大量の粉じんや騒音が発生するため、周囲の養生や作業者の保護具も欠かせません😷
船舶の鋼板には、多くの溶接部や角部があります。
溶接部には凹凸があり、スラグや飛散物が残っていることがあります。
鋭い角は、塗料が流れて薄くなりやすい場所です。
そのため、塗装前に溶接部を整え、必要に応じて角を滑らかにします🔧
ボルト周辺、補強材の裏側、配管支持部なども塗料が届きにくい場所です。
広い平面だけをきれいに仕上げても、こうした細部からさびが始まれば、塗膜全体の寿命が短くなります。
ローラーやスプレーによる本塗装の前に、刷毛で溶接部や角部へ先行して塗る作業を行うこともあります。
細部を丁寧に処理することが、長期的な防食につながります。
機関室周辺や作業甲板などには、油やグリースが付着していることがあります。
油分が残っていると、塗料をはじき、密着不良が起こります。
塗装面へ触れた手袋や工具から、油分が移る場合もあります。
適切な洗浄剤や方法を用いて、塗装前に除去します🧽
洗浄後に汚れた布で再び拭けば、油を広げることになります。
清潔な道具を使い、表面に残りがないかを確認します。
また、研磨作業後の粉じんや研掃材が残っている場合も、塗膜不良の原因になります。
エアブローや吸引、清掃を行い、表面を整えます。
鋼板をきれいに処理した後、長時間そのまま放置すると、空気中の湿気や塩分によって再びさびが発生することがあります。
特に海に近い環境では、短い時間でも表面状態が変化する可能性があります🌊
下地処理が終わったら、表面を確認し、できるだけ適切なタイミングで最初の塗装を行います。
雨や結露が発生した場合は、濡れた表面へそのまま塗るのではなく、乾燥状態を確認します。
工期を優先して無理に進めると、後から大きな不具合につながります。
下地処理から塗装までの工程を連続して管理することが大切です。
船体の鋼板温度と周囲の空気条件によっては、表面に結露が発生します💧
見た目に水滴がなくても、薄い水分が付着している場合があります。
湿った表面へ塗装すると、密着不良や膨れの原因になります。
早朝、夜間、急な天候変化がある時間帯は特に注意が必要です。
空気の温度、湿度、鋼板の表面温度などを確認し、塗装可能な条件かを判断します。
表面が乾いているように見えるから大丈夫という感覚だけに頼らず、測定と確認を組み合わせます。
下地処理が完了したら、塗装前の状態を写真や記録へ残します📸
どの範囲を処理したのか、さびや旧塗膜をどの程度除去したのかを確認できるようにします。
塗料を塗った後は、鋼板表面が見えなくなるため、下地処理の状態を後から確認することはできません。
施工記録は、品質を証明するための重要な資料です。
問題が発生した際にも、原因を調べる手掛かりになります。
船舶塗装の品質は、塗料の種類や色だけでなく、塗る前の下地処理によって大きく決まります。
海洋生物、塩分、油分、さび、旧塗膜などを適切に除去し、塗料が密着しやすい表面へ整える必要があります。
広い船体だけでなく、溶接部、角部、ボルト周辺などの細かな場所まで丁寧に処理することが重要です。
きれいに見える表面でも、塩分や水分が残っていれば、塗膜の内側から劣化が進む可能性があります。
見えない部分まで確認し、最適な状態をつくること。それが、船舶塗装業における下地処理技術なのです🚢🔧✨