皆さんこんにちは!
株式会社宝企画の更新担当の中西です。
~造船現場を支える~
海を行き交う貨物船、タンカー、フェリー、漁船、作業船、タグボートなど、船舶にはさまざまな種類があります。大きさも用途も異なりますが、多くの船に共通して必要になる工程の一つが塗装です。
船舶塗装というと、「船体に色を塗ってきれいに仕上げる仕事」というイメージを持たれることがあります。しかし実際には、見た目を整えるだけの仕事ではありません。船体を腐食から守り、海水や雨風、紫外線などの厳しい環境に耐えられる状態をつくるための重要な工程です
特に鋼製船舶では、防食という目的が非常に重要になります。船は完成後、長期間にわたって海上で使用されます。船底は海水に触れ、甲板は日差しや雨風を受け、タンク内部などにはそれぞれ異なる環境があります。そのため、場所や用途に合わせた塗料・施工方法が必要になります。
IMO(国際海事機関)でも、専用海水バラストタンクなどについて腐食防止を目的とした保護塗装の性能基準が設けられており、船舶における塗膜が単なる美観ではなく、構造物を守る重要な防食システムであることが分かります。国際海事機関
今回は、新造船の建造という視点から、船舶塗装業にどのような需要があるのかを詳しく考えてみましょう
新しい船を造る造船所では、大きな鋼板やブロックを組み合わせながら船体を形成していきます。その工程の中で塗装は、一番最後にまとめて行えばよいものではありません。
建造方法や部位によっては、組み上げる前の段階から表面処理や塗装を行い、その後の工程でも必要な部分を補修しながら仕上げていきます。
なぜなら船が完成してからでは、塗装しにくい場所が数多く存在するからです。船体内部、タンク、狭い区画、構造材の裏側などは、建造が進むほど作業スペースが限られていきます。
そのため船舶塗装は、造船工程と密接に関わりながら進める必要があります。
溶接が終わった。
表面処理を行う。
塗装する。
次のブロックを組み合わせる。
補修する。
こうした流れを他職種と調整しながら進めます。つまり塗装職人は「最後に色を付ける人」ではなく、造船工程の中に組み込まれた専門技術者なのです
船体にとって大きな敵の一つが腐食です。特に鉄を主体とする構造物は、水分や塩分などの影響を受けます。
陸上の鉄骨建築でも錆対策は重要ですが、船舶では海水や潮風に長期間さらされるため、防食への要求はさらに高くなります。
もし船体の塗膜が傷み、鋼材が露出した状態を長期間放置すれば、腐食が進む可能性があります。
だからこそ塗装によって、
鋼材と水分を直接触れにくくする。
海水から保護する。
腐食を抑える。
という役割を持たせます。
船舶塗装は、いわば船体を包む防護服です️
きれいに見えることも重要ですが、その下で鋼材を守っていることこそ本質的な役割です。
船舶塗装で非常に重要なのが、塗料を塗る前の下地処理です。
どれほど高性能な塗料を使用しても、塗装面に錆、油、汚れ、異物などが残ったままでは、本来の性能を十分に発揮できない場合があります。
そこで塗装前には、施工条件に応じて表面を適切な状態に整えます。
船舶塗装では、この「塗る前」の仕事が完成後の品質を大きく左右します。
一般の人から見ると、完成後には上塗りしか見えません。しかし職人が本当に神経を使っているのは、見えなくなる下地部分です。
表面状態を確認する。
必要な処理をする。
粉じんなどを取り除く。
規定された塗装工程へ進む。
この積み重ねが耐久性につながります✨
港に停泊している大型船を見ると、船会社ごとに特徴的なカラーリングが施されています。
白。
青。
黒。
赤。
会社ロゴ。
船名。
こうした外観は企業のイメージにも関わります。
貨物船やフェリーなどは遠くからでも目立つため、「見た目をきれいに仕上げる」という役割も重要です。
しかし外板は、航海中に潮風、雨、紫外線などの影響を受けます。そのため外観だけではなく、防食性能を考えた塗装が必要です。
つまり船舶塗装には、
美観+耐久性+防食性
という複数の役割があります。
均一に仕上げる。
塗り残しを作らない。
必要な膜厚を確保する。
こうした品質管理が求められます。
船の中でも特に特殊な環境に置かれるのが船底です。
船底は運航中、海水に浸かり続けます。さらに船体表面には海洋生物などが付着する可能性があります。
船体に生物が付着して表面が粗くなると、航行時の抵抗増加などにつながるため、船底では防汚性能を持つ塗装システムが重要になります。
IMOでは船舶の有害な防汚システムを規制するAFS条約を設けており、有害な有機スズ化合物を含む防汚塗料の使用禁止など、船底防汚と海洋環境保護を国際的に管理しています。国際海事機関
つまり現代の船舶塗装では、
「生物を付きにくくすれば何でもよい」
わけではありません。
船の性能。
塗膜耐久性。
環境への影響。
関連ルール。
を考えながら適切な塗装を行う必要があります
船内には、船体の姿勢や安定性を調整するため海水を入れるバラストタンクがあります。
ここは海水に触れるため、防食対策が非常に重要な部分です。
しかもタンク内部は、
狭い。
暗い。
複雑な構造。
という作業環境になることがあります。
船体外側のように広い平面を塗るだけではありません。
梁の裏。
角。
溶接部。
構造材の周辺。
細かな部分まで施工する必要があります。
IMOは専用海水バラストタンク等に対する保護塗装性能基準を整備しており、こうした箇所の防食塗装が船舶の安全・維持管理上重要な位置を占めています。国際海事機関
ここでは経験のある職人の技術が大きな価値になります。
船舶塗装では、「見た目に色が付いていれば完成」というわけではありません。
塗装仕様に応じて、適切な塗膜を形成する必要があります。
薄すぎれば期待する性能を得にくくなる可能性があります。一方、ただ厚くすればよいという単純なものでもありません。
そのため施工中や施工後には、仕様・現場条件に応じて塗膜状態を確認します。
塗装職人には、
塗料の特性。
スプレーガンの動かし方。
距離。
速度。
重ね方。
などを理解する技術が必要です。
一見すると同じように吹き付けていても、熟練者と初心者では仕上がりに差が出ます♂️
塗料は化学製品です。
そのため気温や湿度、施工面の状態などによって、施工条件が変わります。
屋外作業なら、
雨。
強風。
高湿度。
低温。
といった天候条件も考えなければなりません。
「工程が遅れているから、とにかく塗る」
では品質を守れない場合があります。
施工条件を確認し、
今日は施工できるのか。
乾燥時間は十分か。
次工程へ進めるか。
を判断する必要があります。
船舶塗装は、職人技であると同時に品質管理の仕事でもあります。
船舶は非常に大きな構造物です。
一人の職人が一隻すべてを塗るわけにはいきません。
複数の職人が、
船体。
甲板。
タンク。
ブロック。
などに分かれて施工します。
そこで重要になるのが、
施工範囲の共有。
塗料管理。
作業順序。
安全確認。
品質確認。
です。
誰がどこまで施工したのか。
次工程はどこから始めるのか。
他工種との作業が重ならないか。
こうした連携がなければ、大規模な造船現場は動きません。
造船所では塗装職だけが働いているわけではありません。
溶接。
配管。
電気。
足場。
艤装。
さまざまな業種が同時に作業します。
例えば塗装した直後に溶接作業が入れば、施工した塗膜へ影響する可能性があります。
反対に、塗装を終えないと次工程へ進めない場所もあります。
だからこそ工程会議や現場調整が重要です。
船舶塗装会社に求められるのは、
「塗装が上手」
だけではありません。
造船現場全体を理解して動けることも大きな強みになります。
船は巨大です。
船体外板を塗装する場合、高い場所で作業することもあります。
一方、船内では狭い区画へ入って施工する場合もあります。
そのため安全管理は非常に重要です。
足場。
保護具。
換気。
火気管理。
作業環境。
一つひとつの確認が欠かせません。
特に塗料や溶剤を扱うため、換気や保護具の適切な使用が必要です。
高品質な施工を行うためには、まず職人が安全に働ける環境を整えなければなりません️
船を造るためには、
鋼材。
溶接。
エンジン。
配管。
電気。
艤装。
さまざまな技術が必要です。
そして船体を海洋環境から守るためには塗装も必要です。
どれだけ最新鋭の船であっても、鋼製構造物を腐食から守るという課題がなくなるわけではありません。
むしろ船舶の高性能化・長寿命化が求められるほど、適切な防食施工への要求は高まります。
船舶塗装業の価値は、完成した船を美しく見せることだけではありません。
海水から守る。
腐食を抑える。
部材を保護する。
船底性能を維持する。
次のメンテナンスまで船を支える。
こうした重要な役割があります。
造船所から大きな船が進水していくとき、その船体表面には多くの塗装職人の仕事が残っています。
しかし塗膜の下地処理や何層にもわたる工程は、完成後にはほとんど見えません。
見えなくなる仕事だからこそ、手を抜かない。
それが船舶塗装の専門性です。
新しい船が建造され続ける限り、防食・防汚・美観を担う塗装工程は必要です。船を海へ送り出す最後の品質づくりを支える仕事として、船舶塗装業はこれからも造船産業に欠かせない存在であり続けるでしょう✨